刑法2-3-9答案例67~69の記述が理解できません。
特に、事後強盗罪の本質は財産犯→窃盗という身分によって構成すべき犯罪になる流れが分かりません。どのような問題意識があるのでしょうか。
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ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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67~69行目は、事後強盗罪を「窃盗」という身分が必要な身分犯と考えた場合(身分犯説)、身分のない人が身分犯に加功した場合には、身分のないその人にも身分犯が成立するという65条1項の処理をしています。
まず、65条1項は、身分のない人が身分犯に加功した場合には、身分犯が成立するとしています。これを本問に当てはめると、窃盗の身分ない乙が、窃盗の身分ある甲に加功した場合には、甲と同じ身分犯である事後強盗罪になるという処理になります。
さて、事後強盗罪の本質は財産犯→窃盗という身分によって構成すべき犯罪になる流れは、事後強盗罪と共犯の処理について身分犯説・結合犯説の対立があるところ、身分犯説を採り65条1項でシンプルに処理するという点を述べています。
まず身分犯説は、事後強盗罪を真正身分犯と考えます(真正身分犯と考えない見解もありますが、試験対策では真正身分犯と考える説を採る方が処理が楽です)。この説は、事後強盗罪が「窃盗」でなければできない犯罪と捉え、真正身分犯だと捉えます。すると、窃盗でない者が事後強盗罪に加功した場合は、真正身分犯への加功として処理されます。この場合は、65条1項の述べる「身分のない人が身分犯に加功した場合は、身分犯と同じ刑で処理するよ」に当たるので、身分のない人も事後強盗罪で処断されます。
この身分犯説の良いところは、65条1項でシンプルに処断できる点です。つまり、事後強盗罪を「窃盗」のみができる真正身分犯と捉えるならば、それに加功した身分のない人は65条1項の場面に当たるので、同条項でそのままシンプルに事後強盗罪成立とできます。
この身分犯説に対し、結合犯説という考えもあります。
これは、事後強盗罪を窃盗+暴行の2つの行為に分けることを重視します。すると、窃盗でない者が事後強盗罪に加功した場合には、暴行の部分に加功したと考え、前半の窃盗については承継的共同正犯として処理します。
つまり、結合犯説は、窃盗→暴行という2つの行為に区切って事後強盗罪を理解するので、窃盗でない者が後から加功した場合には、後半の暴行に加功したと捉え、前半の窃盗については後から加功したとして承継的共同正犯のロジックで処理します。
しかし、受験対策として考えるのであれば、承継的共同正犯という難しい解釈をする結合犯説よりも、真正身分犯からの65条1項で処理できる身分犯説の方が書きやすいとなります。
このように、事後強盗罪の性質に絡んで、①「窃盗」という身分(主体)に着目して真正身分犯として処理するのか、②窃盗→暴行という2つの行為が続いている点にならって結合犯として処理するのかという問題意識があります。
そしてここでは、事後強盗罪の本質は財産犯である→財産犯とは平たく言えば物盗りである→物盗りとは「窃盗」のことであるので事後強盗罪も「窃盗」という点に着目する→事後強盗罪とは「窃盗」という身分がある故に行える犯罪であるとイメージで、身分犯説を採用しています。 (さらに読む)
刑法2-2-5横領罪の検討
講義内で「横領」のあてはめで、委託の内容を特定してそれに背いているか検討し、本問でも委託の趣旨に背いているので横領を満たすと説明されていました。ここで質問ですが、横領の定義①委託の趣旨に背いて➁その物につき・・・・処分する意思は、①を満たせば➁も通常満たすという関係なのでしょうか?
講義内でも、①を主に検討している感じがしたのですが、これは本問特有の話でしょうか。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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この場合は事案によりけりですが、①②は一応分けて検討した方がより緻密な分析になると考えます。①を満たせば通常②も満たす場合がほとんどと思われますが、念のため決め打ちせずに検討した方が無難です。
本問では、委託をしてきたのがウイスキーの所有者(本犯被害者)ではなく、その盗品のウイスキーを持ってきただけの乙です。
つまり、ウイスキーの所有者本人から委託を受けたのではなく、所有者ではない乙から委託を受けているので、本権の裏付けのない委託であっても「委託を受けて」といえるかという特殊性があります。そこで本問では、①が重点的に説明されており、ウイスキーを勝手に全部処分した点は争いなく②に当たるといえるので、さらっと流しています。 (さらに読む)
民法2-3-3、問1後段、問2
どちらも言い分は金払えですが、法的構成が違います。問1後段では、解除構成で検討してますが、121条構成で、金払えの言い分を実現することは不可能なのでしょうか?両者の法律構成の使い分けについて教えてください。
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本問では、どちらも言い分は金払えですが、トラブルの性質が異なりますので、法的構成が違ってきます。
まず、問1後段では、Bの取消しによって遡及的無効(121条)となりますので、AC間は履行不能となります。すると、甲土地という物自体を引き渡すことはできなくなっているので、物が駄目ならお金で解決となり、履行不能からの解除と損害賠償請求を行います。
ここでは、当事者がACであるところ、転売を受けたCは甲土地を入手できないので履行不能となり、この履行不能というトラブルを解決するために、債権法の規定である解除・損害賠償を使っています。そして、このAC間は問2の取消しの場合ではないので、121条構成とはなりません(理由は最後の方に後述します)。
次に、問2では、BがAにあることないこと吹き込んでいるので、AB間には契約の当初から問題があったとして、錯誤取消し・遡及的無効&原状回復義務を法律構成として使います。ここでは、問1後段と異なり、解除は使わず、錯誤取消しと原状回復、それに加えて不法行為を使います。
さて、両者の法律構成の使い分けとしては、①問1後段のAC間は履行不能からの解除&現状回復義務と損害賠償、②問2のAB間は錯誤取消しと遡及的無効&原状回復+不法行為という使い分けになります。
両者の違いは、当初からトラブルがあったかor事後的にトラブルになったかという点になります。
まず、①のAC間では当初はトラブルがありません。AはBを騙していますが、あくまでBを騙しただけであって、AはCを騙しておらず、Cも特にAから何かされたわけでもありません。しかしその後、Bが取り消したことで遡及的無効となり、履行不能となります。
このように、当初は詐欺・錯誤・強迫といった意思表示のトラブルは当事者間(AC間)にないが、事後的に物を渡せなくなった等の場合には、事後的トラブルの問題と考えて、債務不履行(履行遅滞や履行不能、不完全履行)の問題とし、解除や損害賠償を使います。
次に、②のAB間では、当初から錯誤・詐欺という意思表示のトラブルがあります。BはAにあれこれ吹き込んでいるので、Aは契約の当初から錯誤・詐欺という意思表示のトラブルを抱えています。このように、当初から錯誤・詐欺・強迫といった意思表示のトラブルが当事者間(AB間)にある場合には、取消しからの遡及的無効と原状回復(121条系のルート)となります。
すなわち、「当初から当事者間に意思表示のトラブルある場合」には「取消し+遡及的無効&原状回復(121条系ルート)」、「当初は当事者間に意思表示のトラブルはないが事後的に債務不履行というトラブルになった場合」には「解除&原状回復(540条系ルート)+損害賠償(415条)」という使い分けになるのです。
換言すると、当初からトラブルあれば取消し、事後的なトラブルであれば解除という使い分けになります。 (さらに読む)
民法95条1項柱書きのあてはめで、主観的因果関係「基づく」と客観的因果関係「錯誤が・・・重要」がズレることはありうるのでしょうか?
例えば、主観的には因果関係がないが、通常人においてみると因果関係がある場合などです。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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両者は異なる要素であるため、ズレることも想定されます。
まず、主観的因果関係とは、その表意者個人の認識を基準にして、その錯誤がなければその意思表示をしなかっただろうということを意味します。ここでは、その表意者の主観を基準にしています。
次に、客観的因果関係は、表意者ではなく通常人を基準にした場合でも、その錯誤がなければその意思表示をしなかっただろうということを意味します。この客観的因果関係は重要性の要件とも呼ばれ、主観的因果関係がある場合でも、その錯誤が重要といえないのであれば要件を満たさないとなります。すなわち、その表意者であれば意思表示をしない場合でも、通常人を基準とするなら意思表示をするといえるのであれば、客観的因果関係(重要性)が否定されます。
ちなみに、主観的因果関係がない場合は、そもそもその錯誤に基づく意思表示がないと考えられますので、主観的因果関係があるうえで(錯誤に基づく意思表示があるうえで)、その錯誤が重要か(客観的因果関係があるか)という流れになると思われます。
したがって、例えば、売主を人違いで間違えたまま契約をした場合、表意者からすれば売主が違っているので意思表示しなかったといえる場合でも、通常人を基準とすれば意思表示をしても問題なかろうというのであれば、客観的因果関係(重要性)が否定され、錯誤の要件を満たさないとなります。
この客観的因果関係(重要性)が否定される場合としては、売主や賃貸人の同一性の錯誤がそれに当たるとされています。 (さらに読む)
刑法235死者の占有。殺害後に奪取意思が生じ、財物奪取した場合、被害者の生前の占有が、殺害行為者との間では要保護性ありとありますが、殺害行為者以外との間では要保護性がないということでしょうか?この理由の違いについて教えてください。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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挙げていただいた通り、殺害行為者以外との間では要保護性がない等を理由として、遺失物横領罪又は占有離脱物横領罪になると考えられています。
両者の違いについては、刑法の法益保護機能と自由保障機能とのバランスから考えてみるのが一手です。
まず、法益保護機能からすれば、殺害直後の被害者の占有は法の保護に値するとして、窃盗罪を成立させるべきだという価値判断になります。これは、殺害により被害者からその財物の占有を離脱させた自己の先行行為を利用して奪取したという一連性も重視することと相まって、窃盗罪にすべきとの価値判断になります。
他方で、自由保障機能からすれば、何でもかんでも刑罰で罰すべきではなく、必要最小限にすべきだという価値判断になります。
そこで、両者のバランスを考えて、殺害行為者との関係では生前の占有を保護して窃盗罪とし、それ以外の行為者との関係では窃盗罪までは成立させず、遺失物横領罪又は占有離脱物横領罪にとどまるとなります。 (さらに読む)
勉強方法について質問です。
今年短答171点、論文不合格でした。
短答合格から論パタ講義を受講しており、残り刑法、行政法、商法です。
勉強時間としては週に平均20時間で1日に1時間短答過去問潰し、2時間論パタ受講です。
短答はギリギリの合格でしたので、今の進め方で良いのか、それともより良い方法があるのか教えてほしいです。
論文再現答案があるのでカウンセリングの機会があれば申し込みしたいです。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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まずは、予備試験のご受験、お疲れ様でした。
短答に通過という点だけでも質問者様が頑張ってきたことが伝わってきますので、頭が下がる思いです。
さて、学習の進め方としては、一旦は4S論パタの受講をメインで進めるのがよいといえます。
短答は大きく分けると、①論文用の条文・解釈論の知識で解ける問題、②短答プロパー用の細かい知識を問う問題の2つに分かれます。このうち、①については論文対策でカバーできると省力化が可能であり、また、②を解く前提として①をしっかり習得する必要があります。
そのため、まずは残りの論パタを受講いただき、論文対策を済ませるのがベターです。論文対策を正しく行って処理手順・重要基本事項を身につけておくと、上記②の知識が覚えやすくなると同時に、短答・論文ともに行き当たりばったりで問題を解き散らかすという危ない動作を減らすことができます。
したがって、当面の間は論パタをメインに進めて論文対策を行い、処理手順・重要基本事項をしっかりと習得いただくのが短答対策にも直結します。 (さらに読む)
既判力の4S処理で基準時について検討だけする場合と、検討かつ答案でも基準時について論述する場合の違いを教えてください。私見、2-4-3のように、前訴基準時に提出を期待できないような事実の検討ができる場合には基準時の論述をすべきなのかと考えています。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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挙げていただいたように、基準時に係る処理を正面から行う場合には、基準時について論述する場合が多いです。
既判力については、客観的範囲・主観的範囲・基準時(時的限界)と遮断効といったいくつかの領域でそれぞれの問題点が発生します。このうち、検討すべき問題点が発生する領域については、答案上はある程度厚く論述する場合が多いです。
したがって、2-4-3のように、前訴基準時に提出を期待できないような事実の検討ができる場合には、基準時(時的限界)と遮断効に係る問題点を正面から検討するのが題意と捉えて、基準時をある程度厚く論述するとなります。 (さらに読む)
4s図以外の答案構成①は必要ないのでしょうか?
私はむしろ①のほうが、得点に結びつきやすいと思っていて、その部分を練習できていないことが不安です。
ここでいう①とは以下のようなもです。
(ナンバリングを振ったミニ答案を作る、
問われている論点の名前を書き出す、
問題文の拾いたい事実に番号を記してミニ答案に反映する)
ご質問をいただきありがとうございます。
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4S図以外の答案構成は、必要であれば作成・使用しても全く大丈夫です。その方が答案作成しやすいのであれば、むしろ使う方が得策と考えます
挙げていただいたように、ミニ答案を作成するやり方であっても、質問者様にとってマッチしているのであればそのやり方で大丈夫です。
答案構成のやり方は、唯一絶対のものがあるわけではなく、ご自身にマッチするやり方を採用いただければ問題ありません。4S合格者の私も、4S図自体は念頭に置いた上で、実際の答案構成自体は簡単な文章やメモ書きのような形で行うことの方が多かったです。
そのため、挙げていただいたミニ答案のような形がやりやすいのであれば、それを無理に変える必要はまったくございません。 (さらに読む)
[予備試験・司法試験]【2年受講プラン】中村充『4S基礎講座』を受講開始した者です。講義を聞いているといきなり4S(?)を開始したり、J所(多分裁判所のこと?)など、すでにある程度講義を聞いた者が対象者のように見えます。
質問は、
この講座の前に受けておく講義がなにかありますか?
です
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ご質問をいただきありがとうございます。
以下、講師からの回答をお伝えします。
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4S基礎講座の前に受けておくべき講義は特にありません。そのため、いきなりこの講座を受けていただいて大丈夫です。
法律は全体がつながっている構造になっている面もありますので、はじめのうちは、4S基礎講座に限らず戸惑うこともあるかと思います。しかし、講義を受講していくうちに徐々に慣れていきますので、心配は不要です。
一応、講義前の準備体操ということであれば、伊藤塾の伊藤真塾長の『伊藤真ファーストトラックシリーズ』という市販の入門書がございます。そのため、このシリーズを読んでみると講義にスムーズに入れると考えられます。 (さらに読む)
刑法2-3-9
事後強盗罪の対等型共同正犯で正犯意思のあてはめで、甲の窃盗と乙の暴行(4s図)とありますが、甲に暴行の意思、また乙に窃盗の意思は考えなくていいのでしょうか?
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ご質問をいただきありがとうございます。
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ここは答案例63~64行目にありますように、最終的に甲乙に事後強盗自体の正犯意思を認定するという処理になります。
本問では、甲が通帳を摂取した後に乙が加勢して暴行を加えていますが、問題文の下から7行目に「総ての事情を了解し」とあるので、甲乙は最終的に現場共謀で事後強盗自体を行うことについてまで共謀ありと読めます。
そのため、最終的には甲乙に対して、事後強盗自体の正犯意思と共同実行の事実、故意を認定する処理になり、これを記述したのが答案例の63~65行目になります。 (さらに読む)
刑法2-3-12
乙の共犯からの離脱→中止犯の検討について。本問で丙丁に強盗既遂罪が成立しているので、乙に共犯からの離脱を認めたとしても、中止犯の前提となる43条本文の「犯罪の実行に着手しこれを遂げなかった者」に乙が当たるのでしょうか。
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この場合には、未遂犯の更に前段階の予備罪にとどまると考えられるので、中止犯にもならないとの処理になると思われます。
共犯からの離脱が認められた場合には、離脱後の行為について責任を負わなくなります。
本問では、仮に乙に離脱が認められれば、強盗の実行行為着手前に離脱する形になるので、実行行為についても責任を負わず、予備罪の限度で責任を負います。そして、予備罪には未遂犯を観念する余地がないため、この場合は予備罪のみで処断され、予備罪について中止犯とはなりません(最大判昭和29年1月20日)。
挙げていただいたように、乙に中止犯が成立する場合とは、乙が実行行為を行ったが未遂に終わった場合ですので、実行行為着手後で結果発生前の離脱であれば、中止犯を検討する余地が出てきます。
しかし、本問のように実行行為着手前に離脱する場合は、実行行為の責任すら負わないため中止犯とはならず、あとは陰謀・予備罪を検討します。この陰謀・予備罪については中止犯は成立しないとするのが一般的です。 (さらに読む)
刑法の傷害罪で、問題文中に傷害罪の故意を否定するような特段の事情が書いてない場合、基本的に故意は認めてしまっても大丈夫でしょうか。
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刑法の傷害罪で、問題文中に傷害罪の故意を否定するような特段の事情が書いていない場合には、その行為者の行為態様から故意が認められる旨を簡潔に記述すれば足ります。
例えば、「甲の行為態様から、傷害の「罪を犯す意思」(38条1項本文)も問題なく認められる」という形で、基本的に故意が認められる旨を簡潔に記述するのが一手です。 (さらに読む)
民法2-4-9
危険負担536条→567条に至る経緯が理解できませんでした。536条だと何がまずいのでしょうか?
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本問で、536条ではなく567条2項・1項後段になる理由は、松茸の引渡債務の履行を提供したといえる点にあります。
本問では、21日の午後8時には松茸を乙倉庫で引き渡せるように準備完了しているので、「債務の履行を提供した」といえる段階になっています。
すると、567条2項は「債務の履行を提供した」場合の条文ですので、松茸を乙倉庫で引き渡せるように準備完了したという一連の事実が567条2項の適用場面に当てはまるとして、567条2項からの同条1項後段を使うという流れになります。
536条は債務の引渡し前・履行の提供前の条文なので、本問の松茸のように「債務の履行を提供した」といえる段階であれば、567条を使うこととなります。 (さらに読む)
刑法2-2-7
運転免許書に紙面を貼り付けた行為の、名義人(155条)のあてはめについて。本問で、甲が紙面を運転免許書に貼り付けていますが、仮にこれが高度な技術により直接同書を肉眼で見ても、紙面を貼り付けられたものとは通常、認識できない場合、名義人は、都道府県公安委員会になるのでしょうか。
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ご質問をいただきありがとうございます。
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挙げていただいた仮の事例であれば、名義人が都道府県公安委員会となる筋もあり得ますので、「偽造」に当たると考えられます。
本問で、運転免許証に紙片を張り付けた行為自体が「偽造」に当たらない理由は、紙片を張り付けるという安直な動作では、その運転免許証を見た通常人は誤信しないので、紙片を張り付けたのも運転免許所の持ち主である甲だと分かる(甲が名義人となる)という点にあります。
そのうえで、スキャナーで読み取らせると紙片が張り付けられたとは見えなくなることから、このスキャナー読み取りまで含めれば、名義人が都道府県公安委員会になるという流れです。
そのため、仮に高度な技術で氏名欄を本物と同じレベルで改ざんできるのであれば、その運転免許証を見た人が名義人を都道府県公安委員会だと認識するので、「偽造」に当たるという筋もあり得ます。
すなわち、高度な技術によって運転免許証の氏名欄を本物そっくりに「甲」と改ざんできたのであれば、通常人はその免許証を見た際に「都道府県公安委員会が甲という人に免許を許した」と認識するため、名義人は都道府県公安委員会・実際に作成したのは甲となり、「偽造」になると考えられます。 (さらに読む)
刑法2-2-4
講義内で、フラッシュメモリにコピーした行為に235条の「財物」性を否定して、データ売却行為では、同条の「財物」性を肯定した理屈が、よくわからなかったので、詳しく解説お願いいたします。
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これについては、何について財物性を検討しているかを識別できれば大丈夫です。
まずデータをフラッシュメモリーに移した行為1については、移された「データ自体」について財物性を検討しています。
すると、財物とは有体物(固体・気体・液体)をいうところ、データ自体は電子の情報であるため固体・気体・液体のいずれにも当たらず、財物性は否定されます。
次に、データを移したフラッシュメモリーを売却した行為2については、売却された「フラッシュメモリー自体」の財物性を検討します。
すると、フラッシュメモリー自体は電子機器という固体なので財物性が肯定されます。
このように、行為1では「データ自体」、行為2ではデータを移された「フラッシュメモリー」がそれぞれ被害品といえるので、データ自体かフラッシュメモリーかという点で財物性の肯否が異なるという流れになります。 (さらに読む)
行政法2-4-4答案例51行目の反論は、どの要件に対する反論なのでしょうか?①指導に従う意思がない旨を表示した、②真摯かつ明確のどちらかでしょうか?
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こちらについては、強いて言えば①への反論と考えられます。
51行目にある「金銭補償で付近住民との紛争を解決」という事実は、行政指導に従ったゆえの行為なので、①に関連して、行政指導に従う意思の表れと捉えることができるからです。 (さらに読む)
【行政法論パタ】第31回 2-4-1。手続上の違法を検討するにあたり、行手法12条に該当する処分基準なるものがないと講義でおっしゃられていましたが、参照条文の地方公務員法27条は、行手法12条にいう処分基準には該当しないのでしょうか?
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処分基準とは行政規則の一種であり、この行政規則は行政機関内部のルールであって、外部的には効力を有しないものです。
すると、地方公務員法27条の規定は法律による規定であるところ、法律は国民に対し外部的効力を有するものであるため、行政規則・処分基準には当たりません。 (さらに読む)
【行政法論パタ】第33回 2-4-1の講義内終盤の復習で、先生が、手続き的違法で、適用除外されたら個別法を検討する手順は皆気づかないからオプションとありました。これはその後の処理として通常通り適用除外されないとして行手法から違法事由を調達すればいいのか、行手法違反には触れず実体的違法を検討すればよいのかどちらの趣旨でしょうか?
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この場合は、①個別法の手続的違法事由、②個別法の実体的違法事由の2つを検討するのがおすすめです。
まず、行手法が適用除外となる場合に、行手法を適用除外されないとして検討すると論理矛盾のリスクがあります。そこで個別法の条文から手続規定を見つけて、その個別法の手続規定に照らして手続的違法事由がないかを検討します。この場合には、行手法で習った理由付記などを想起するのが一手です。そのうえで、個別法に則して、さらに実体的違法事由が無いかを検討します。
以上より、本問のような問題の処理の流れとしては、①行手法の適用除外である点を認定し、②個別法を読み解きながら実体的違法事由・手続的違法事由の2つを考えるとなります。 (さらに読む)
『刑法の法的因果関係の書き方』あてはめで行為の危険性を設定する際は、自分がもっていきたい結論(通常は因果関係を肯定する方向)に沿うように危険の内容を書けばいいのでしょうか?そして、その危険の内容は、問題文に書いてある事情(現実化した危険・結果)を使って逆算的に書くということでもいいのでしょうか?また、試験の相場として法的因果関係を検討させる場合、条件関係が否定されることはあまりないのでしょうか?
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ご質問をいただきありがとうございます。
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おおむねその理解で大丈夫です。
あてはめにおいては、自分が採りたい結論を自然かつ合理的に導けるように、事実の摘示・評価を常識的に行えれば大丈夫です。
危険の内容については、問題文の事情から逆算などして常識的な説明ができれば良いです。また試験の相場として法的因果関係を検討させる場合、条件関係が否定されることはあまりないと考えられます。
条件関係が否定されるとそもそも危険の現実化の話に行かないので、法的因果関係として危険の現実化の検討を出題意図とする場合は、その前提となる条件関係は認められるような事実関係になると考えられます。
因果関係に限らずあてはめにおいては、結論とそれに至る事実の摘示と評価に常識外れがないかを気をつけると説得的に書けます。 (さらに読む)
4S論文解法パターンテキスト民法2-2-7、2-4-9問2について。民法415条1項但書にそって履行補助者を論ずる際に報償責任の法理を用いるのは控えた方がいいでしょうか?
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履行補助者の場合でも、報償責任の法理を指摘することは可能と考えます。
野澤正充先生の『債権総論 セカンドステージ債権法Ⅱ〔第4版〕』60頁によれば、履行補助者について「今日の判例(大判昭和4・3・30民集8巻363頁)及び学説では、債務者の責任が認められることに争いはない。というのも、今日の経済社会においては、企業が取引の主体の中心であり、債務者(企業)は、履行補助者を用いることによってその活動領域を広げて利益を得るものであるため、履行補助者の行為についても、債務者の責任を認める必要があるからである(平井・債権総論83頁)。このような理解は、被用者の不法行為について使用者が責任を負う(715条)根拠(報償責任・危険責任)と同様である。」とあります。
この記述によれば、履行補助者の行為について債務者の責任を認める根拠が被用者の不法行為について使用者が責任を負う根拠(報償責任・危険責任)と同様であると読めますので、同書の立場に依るならば報償責任の法理を履行補助者の場合でも指摘可能と考えます。 (さらに読む)